車両
2022.06.18更新
新デザイン化、一部加筆、写真を追加しました。

80系/2016.11.26-井高野

80系/2021.11.19-大正

概 要

 大阪市高速電気軌道(大阪市交通局)80系車両は、2006(平成18)年12月24日開業の今里筋線用として製造された車両で、長堀鶴見緑地線の70系と同じく、VVVFインバータ制御による鉄輪式リニアモーター地下鉄車両である。

今里筋線開業日

 2004(平成16)年に試作車の第01編成が近車で製造された。この試作車は長堀鶴見緑地線に所属し、走行試験などの各種試験を行ってきた。この試験結果は後の量産車の製造に活かされ、開業前に今里筋線へ転属した。量産車となる第02~17編成は、2006(平成18)年に4両編成16本64両が近畿車両と川崎重工で製造された。試作車との相違点は、扉開閉装置が試作車の電気式から量産車では空気式へ、韓国大邱市の地下鉄火災を受けて見直された「地下鉄道の火災対策基準」施行に伴い客室内の機器やぎ装で防火の強化が図られたことなどがある。

 80系は2両1ユニットとする4両編成で、将来の需要に応じて6両編成まで増結できる設計となっている。設計時は最高速度80km/hを視野に入れていたが、最終的に他の路線同様70km/hが最高速度となった。70系をベースとしつつ、様々な新技術導入や機器改良による小型化などが行われている。70系で搭載された自動列車運転装置(ATO)はなく定位置停止支援装置(TASC)を大阪市では初めて搭載、停車駅に入駅するまでは運転士の手動運転となっている。また今里筋線には可動式ホーム可動柵が設置されることから、量産車は新造時から連結面間転落防止装置は設置されていない。70系同様運転台は右側、狭いスペースを有効活用するために主幹制御器はワンハンドルになっている。

 2013(平成25)年の今里筋線ダイヤ改正で車両運用が1列車減となり、第17編成が休車となっていた。その後に長堀鶴見緑地線で車両運用が1列車増とする計画が持ち上がり、休車となっていた第17編成を転属させることとなった。転属改造は外部に搬出されて行われ、2018(平成30)年10月25日付で転属、車番は30番台とされて第31編成となった。

 現在、4両編成16本の64両が今里筋線で、4両編成1本4両が長堀鶴見緑地線で活躍している。

80系と可動式ホーム柵

80系と可動式ホーム柵

第08編成

第08編成

80系と80系30番台

80系と80系30番台

腰部にあったマルコマーク

腰部にあったマルコマーク

マルコマーク撤去跡

マルコマーク撤去跡

試作車の連結面間転落防止装置跡

試作車の連結面間転落防止装置跡

試作車

長堀鶴見緑地線で試運転中の第01編成

 試作車の第01編成は近畿車輛にて製造され、2004(平成16)年12月1日に長堀鶴見緑地線用車両として竣工した。第01編成は2004(平成16)年11月中旬に鶴見検車場に搬入、長堀鶴見緑地線内にて夜間・昼間問わず各種試験を行い、その試験結果は80系第02編成以降の量産車製造に活かされている。試作車では戸閉装置に大阪市で初の電気式、電動モーター駆動・ベルトドライブ方式を採用。客室照明のグローブは廃止となり、その部分には格子状の防護カバーを取付けた。しばらく長堀鶴見緑地線内で走行することから連結面間転落防止装置が取り付けられていた。各種試験を終えた試作車は今里筋線へ転属、営業運転開始までに量産車に準じた改造を行ったが、戸閉装置については今後の新造車に活かすため、第01編成のみ電気式で長期使用していくこととなった。

外 観

80系前頭部

 車体は大型・中空形材アルミ合金製で、70系同様の全面塗装となっており、基本色は70系と同じクリーム色である。塗装材には製造時点で最も耐久性に優れると考えられたウレタン塗装+ウレタンクリア塗装を採用した。全編成とも新造時よりスカートが取り付けられている。全体的に70系をベースにしつつも若干の丸みを帯びており、柔らかさ・優しさを表現している。

 車体側面は、ミニ地下鉄となっているため車体長は15mの片側3扉である。アクセントとして、腰部には路線カラーである柑子色の車体全長の帯が巻かれ、可動式ホーム柵設置のホーム上からも路線カラーが確認できるように上部も塗装されている。また扉部は車体よりも濃いクリーム色に塗装され、扉の位置をわかりやすくした。上部には車外スピーカーが設置されている。側面行先表示装置は70系はLEDであったが、80系ではコスト削減から従来通りの幕が採用され、今里寄(8500形のみ井高野寄)に設置されている。側窓は大阪市初の1枚窓下降式(一部は固定窓)が採用されている。乗務員扉横にはリニアモータ車両を表すLIMマークを設置、マルコマークは下部に1車両片側1ヶ所ずつ設置されていたが、民営化に伴い取り外されている。車両番号は可動式ホーム柵設置のホーム上から確認できるように窓上に配されている。

 車体前頭部は、70系を踏襲した形となっているが若干丸みを帯びさせた柔らかいデザインとし、貫通口を車掌室いっぱいに寄せた非対照形である。行先表示装置は従来通り幕で上部中央に設置。その両端に前照灯と尾灯が設置されている。車両番号は貫通口の窓下に設置された。腰部は貫通口部が柑子色に塗装されており、運転台下にはシンボルマーク(路線番号の「8」とリニアモータの略称「LIM」を変形したもの)が配されている。

シンボルマークと連結器

シンボルマークと連結器

80系側面車番

80系側面車番

80系LIMマーク

80系LIMマーク

車両とホームの段差は少ない

車両とホームの段差は少ない

扉部分の塗装の違い

扉部分の塗装の違い

80系側面方向幕

80系側面方向幕

80系腰部

80系腰部

80系屋根

80系屋根

80系パンタグラフ

80系パンタグラフ

車 内

80系車内

 車内は、構体折れ部を70系では床面上から1,400mmであったものを80系では床面上から810mmに変更し、側窓を平板ガラスとすることでコスト削減を図った。また側窓に1枚窓を採用することにより小さい車体ながらも開放感を持たせている。2004(平成16)年12月27日付「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準」の一部改正が施行、「地下鉄道の火災対策基準」が見直されて防火対策を講じる必要があり、量産車設計で防火強化が反映されている。なお試作車についても改正解釈基準と比較しても遜色ない車両となっている。鴨居部から上の天井までは、車両火災発生時に車両材料の溶融滴下による延焼(火災により材料が溶融、落下して火災を拡大すること)を防ぐために溶融滴下の防止を図っていく必要があり、鴨居部と天井の化粧板には耐溶融滴下性を有するものを採用した。車内蛍光灯は70系では樹脂性のグローブを取付けていたが、溶融滴下性の観点から試作車の時点で廃止しており、蛍光灯の保護のためにステンレス棒2本を蛍光灯に沿って設置している。車内案内表示装置と扉開閉案内装置を1両あたり3ヶ所ずつ、それぞれ千鳥配置で設置しているが、こちらについても火災時の溶融滴下防止のために表面をガラスで覆う構造としている。座席にはバケットシート(幅470mm)を採用、表地はライトグリーンとなっており、柄は70系後期車・66系後期車と同じもの(■柄)を採用、扉間は5人掛け、車端部は4人掛けである。車内高さは冷房装置の薄型化(高さ195mm)により70系の2,000mmから2,045mmとなったため、70系では設置しなかった扉部のつり革を設置。扉部のつり革は扉間のつり革よりも若干高い位置に設置されている。床敷物は茶色系の砂目模様、扉窓は全車が複層ガラスとなっている。なお今里筋線では列車とホームの段差を少なくし、車いす等利用時のバリアフリー化を図っているが、車両の床面高さは70系と同様の850mmと変わりなく、ホーム高さを30mm上げて830mmとすることでバリアフリー化を図っている。

 試作車と量産車が異なる点として、扉閉装置の電気式と空気式、座席下の扉非常用コック部の蓋有無、車内案内表示装置のスピーカーの処理程度である。

80系車内(試作車)

80系車内(試作車)

80系車内乗務員室側

80系車内乗務員室側

80系座席

80系座席

80系優先座席

80系優先座席

80系車椅子スペース

80系車椅子スペース

80系扉開閉案内装置

80系扉開閉案内装置

80系車内案内表示装置(試作車)

80系車内案内表示装置(試作車)

80系車内案内表示装置(量産車)

80系車内案内表示装置(量産車)

80系蛍光灯保護ステンレス棒

80系蛍光灯保護ステンレス棒

80系車内扉非常用コック部(試作車)

80系車内扉非常用コック部(試作車)

80系車内扉非常用コック部(量産車)

80系車内扉非常用コック部(量産車)

台 車

80系台車

 台車は、70系と同じくリニアモータを台車枠に装荷するリニアモータ駆動式空気ばね台車LS-80(FS-537B)で、セルフステアリング機能を持っている。形式こそ異なるが、車輪直径・固定軸距・1軸1ディスクブレーキという基本構造は同じである。

長堀鶴見緑地線への転属

第31編成

 2013(平成25)年3月23日のダイヤ改正で今里筋線は車両運用が1列車減となり、第17編成が休車となっていた。しばらくして休車となっていた第17編成を活用し、長堀鶴見緑地線で車両運用が1列車増とするダイヤ改正の計画が持ち上がり、車両改造することとなった。改造は大阪車両に搬出して行われ、2018(平成30)年8月23・24日に鶴見検車場に搬入、2018(平成30)年10月24日付で改造竣工となった。70系と車両性能が異なるためにATO運転パターンプログラムを新たに作成する必要があるなど、様々な調整を行ったために営業開始は2019(平成31)年3月中旬となった。

【主な改造内容】

第31編成

第31編成

側面帯

側面帯

前頭部ロゴ

前頭部ロゴ

方向幕

 80系については、登場時より新規追加・削除は行われていない。

試作車の方向幕は今里筋線開業までに量産車と同じものに変更され、長堀鶴見緑地線に転属した編成は70系に準する内容となっている。

※第31編成の前頭部方向幕の鶴見緑地の英語表記は「Tsurumi-Ryokuchi」となっている。

試作車 今里筋線

開業

-現行-
長鶴線

転属

-現行-
1
2 井高野

Itakano
井高野

Itakano
京橋[N22]

Kyobashi
3 今里

Imazato
今里

Imazato
鶴見緑地[N26]

Tsurumi-ryokuchi
4 太子橋今市

Taishibashi-Imaichi
清水

Shimizu
横堤[N25]

Yokozutsumi
5 清水

Shimizu
6 関目

Sekime
7 蒲生四丁目

Gamo 4-chome
心斎橋[N15]

Shinsaibashi
8 大正[N11]

Taisho
9 門真南[N27]

Kadoma-minami
10
11
12 回送

Out of service
回送

Out of service
回送

Out of service
13 試運転

Out of service
試運転

Out of service
試運転

Out of service
14 臨時

Extra
臨時

Extra
臨時

Extra
15

主要諸元表

形式 8100 8200 8400 8500
車種 M2c M1e M1e M2c
車体構造 アルミ アルミ アルミ アルミ
自重〔t〕 26.5 24.5 24.5 26.5
定員(座席定員)〔人〕 88(26) 99(34) 99(34) 88(26)
車体長〔mm〕 15,800 15,600 15,600 15,800
車体幅〔mm〕 2,496 2,496 2,496 2,496
車体高〔mm〕 3,120 3,110 3,110 3,120
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制御装置
VF1-HL1410A <日立IGBT>
主電動機

●:MB-7005-B(三菱)

  100kw 2個/両
駆動方式

●:リニア
連結装置

●:鶴見型密着

○:半永久
低圧電源装置

●:SVH-120-4042A
空気圧縮機

●:C-2000L
集電装置

<>:PT-7005-A

   シングルアーム型パンタグラフ
制動装置 OEC-4LM 電気指令式電磁直通空気ブレーキ

(回生ブレーキ・保安ブレーキ・応荷重装置付)
台車型式 LS-80(FS-537B)
最高速度 70km/h
加速度 2.5km/h/s
減速度 3.5km/h/s(常用最大) 4.5km/h/s(非常)
集電方式 / 電圧 架空線集電方式 / 直流1500V
走行路線 大阪市高速電気軌道今里筋線(井高野~今里)

大阪市高速電気軌道長堀鶴見緑地線(大正~門真南)
配置 鶴見緑地北車庫(第01~16編成)

鶴見検車場(第31編成)

車両履歴表

編成表

〔←井高野 今里→〕

竣工日 製造所 転 入 転 出
日 付 元所属 日 付 新所属
8101-8201-8401-8501 2004.11.30 近車 2006.11.01 長鶴
8102-8202-8402-8502 2006.10.31 川重
8103-8203-8403-8503 2006.10.31 川重
8104-8204-8404-8504 2006.10.31 川重
8105-8205-8405-8505 2006.10.31 川重
8106-8206-8406-8506 2006.10.31 近車
8107-8207-8407-8507 2006.10.31 近車
8108-8208-8408-8508 2006.10.31 近車
8109-8209-8409-8509 2006.10.31 近車
8110-8210-8410-8510 2006.10.31 近車
8111-8211-8411-8511 2006.10.31 近車
8112-8212-8412-8512 2006.10.31 近車
8113-8213-8413-8513 2006.10.31 近車
8114-8214-8414-8514 2006.10.31 川重
8115-8215-8415-8515 2006.10.31 川重
8116-8216-8416-8516 2006.10.31 川重
8117-8217-8417-8517 2006.10.31 川重 2018.10.25 長鶴

車両履歴表

編成表

〔←大正 門真南→〕

竣工日 製造所 転 入 備 考
転用改造 改造所 日 付 元所属
8131-8231-8431-8531 2006.10.31 川重 2018.10.24 大阪 2018.10.25 今里筋 元第17編成