車両
2023.10.01更新
新デザイン化、一部加筆、写真を追加しました。

8000形原型/2008.03.26-新大阪

8000形/2013.09.24-新金岡

概 要

運転開始20周年ステッカーを貼る第01編成

 北大阪急行電鉄8000形車両は、1986(昭和51)年7月1日から営業運転を開始した車両で、開業当初からの2000形置き換え用に製造された。北の空に光を放ちながら方位の指針となっている北極星になぞられて「ポールスター(POLESTAR)」という愛称がついている。地下鉄車両として必要な仕様を十分具備しながら、車体の軽量化、保守用のモニタリングシステムの本格導入や、乗客に対する客室内設備にも細かい配慮を各所に払うなど、充実した内容を数多くもっていることが高く評価され、1987(昭和62)年にローレル賞を受賞した。また、1988(昭和63)年10月には「ポールスター号賛歌」が制作されている。

 御堂筋線の輸送力増強に伴い北大阪急行保有車両も増結が求められていた。検討したところ、乗客サービス向上で2000形を冷房化のためには屋根及び側構えの大改造が必要である、2000形を冷房化した場合は主抵抗器の放熱に冷房装置の放熱がプラスされてトンネル内温度がさらに上昇する、2000形に冷房装置を搭載するには電源の問題もある等の理由により、それらの改造費用と2000形の寿命に対し、新形式を新造したことによって得られる省エネルギー化、乗客のニーズに応えるサービス向上などの利点を考え合わせると、新形式を新造した方が得策であるとの結論に至った。8000形設計にあたり「より高度の安全輸送の確立」と「より良質のサービスの提供」を二大方針とし、「(1)乗客に対しては、快適性の向上と必要な情報の充実を図る。(2)乗務員に対しては、運転操作性や作業環境の改善と異常時対応の迅速化を図る。(3)技術員に対しては、保守作業の簡易化と機能の信頼性の向上を図る。(4)企業イメージの向上。」という4つの方向からきめ細やかな検討が行われた。その結果、(1)貫通扉の自動化・正面に加え側面にも行先表示器の設置、(2)運転台のデジタルメーター・マイコン式モニタ装置の採用、(3)アルミ車体・VVVFインバータ制御の採用、(4)斬新な車体外観デザインの採用など、可能な限り最新の技術を取り入れた。

 当初は8両編成(8000-8200-8300-8400-8600-8700-8800-8900)で登場したが、10両編成まで増結が可能な機器配置で設計された。第01・02編成が8両編成で竣工、第03~07編成は9両編成での竣工である。1993(平成5)年4月30日に第07編成が竣工、代わりに2000形第02編成が1993(平成5)年10月6日で廃車となって置換えが完了、同時に冷房化100%を達成した。1995(平成7)年~1996(平成8)年にかけて10両編成化を行っている。

 2012(平成24)年からは機器の老朽化が目立ってきたことから機器更新改造が開始。また8000形の置き換え用として2014(平成26)年に9000形が登場し、2014(平成26)年7月の第02編成から一部編成の廃車が行われた。廃車されたうち、8001号車は桃山台車庫で保存、8901号車はカットモデルとして桃山台車庫に、8005号車は兵庫県丹波篠山市内の会社敷地内に保存されている。桃山台車庫で保存されていた8001号車については2021(令和3)年8月に解体された。

 2018(平成30)年からはリニューアル改造、2020(令和2)年からは可動式ホーム柵対応化・ATO/TASC化改造が残った3編成に対して行われて現在に至る。

 現在、10両編成3本の30両が北急南北線・相互直通運転をしている御堂筋線で活躍している。

桃山台車庫の8000形

桃山台車庫の8000形

雪の中を走る第01編成

雪の中を走る第01編成

淀屋橋駅に停車中の第03編成

淀屋橋駅に停車中の第03編成

「8001 LAST RUN」ヘッドマーク

「8001 LAST RUN」ヘッドマーク

8000形30周年ヘッドマーク

8000形30周年ヘッドマーク

前照灯がLEDとなった第03編成

前照灯がLEDとなった第03編成

方向幕がLEDとなった現在の姿

方向幕がLEDとなった現在の姿

保存されていた8001号車(現在は解体)

保存されていた8001号車(現在は解体)

8901号車はカットモデル化

8901号車はカットモデル化

外 観

前頭部

 車体はアルミ製で、企業イメージアップのためにアイボリーホワイトで塗装されている。これにファインレッドとマルーンの帯でアクセントを付けている。桃山台車庫内の自動研掃塗装装置の撤去に伴い塗装は行われなくなり、塗装車として残っているのは第03編成のみで、第06・07編成はラッピング車となっている。

 車体側面は、御堂筋線に合わせた片側4扉で、上部にファインレッド、腰部にマルーンの帯を配している。登場当時から側面に行先表示器を設置しており、利用客の利便性向上を図っている。

 車体前頭部は、正面を斜めにカットして流動感を持たせたデザインで、貫通扉を車掌室いっぱいに寄せて運転台正面窓を広くとった非対称形となっている。上部にはポールスターのロゴと行先表示器を設置しており、そのデザインは登場から長期間経過しても古さを感じさせない洗練されたデザインとなっている。腰部の両端に前照灯・尾灯が設けられ、第三軌条路線では珍しく補助排障器(スカート)が取り付けられている。

側面

側面

転落防止幌

転落防止幌

前頭上部

前頭上部

車 内

8000形車内

 車内は、冷房装置を搭載しながらも客室空間を極限まで大きく採れるよう、冷風ダクトを両端に寄せて中央部を1段高くしてダブルルーフとした。化粧板にマホガニ木目調を採用して親会社の阪急電鉄を思わせる雰囲気となった。座席はオレンジ色、天井はクリーム色とし、暖色系でまとめられた。日除けは阪急電鉄と同じく鎧戸を採用した。通勤型車両では珍しく車内貫通扉は自動化されている。座席は後に現在のゴールデンオリーブ色となった。第06編成のみ、2002(平成14)年11月に車内案内表示装置を設置、同時にドアチャイムの自動化が行われた。

8000形座席

8000形座席

8000形車内案内表示装置

8000形車内案内表示装置

台 車

台車

 台車は、乗り心地の向上と軽量化、保守の簡素化を目的としてボルスタレス空気ばね台車、SS-106・SS-006を採用した。

増 結

9両編成化 【1987(昭和62)年】

 御堂筋線あびこ~なかもず間開業と御堂筋線輸送力増強工事が進展してきたことから、8両編成で竣工した第01・02編成を9両編成化した。増結は8100形を新造し、8000・8200形の間に組み込んだ。

10両編成化 【1995(平成7)~1996(平成8)年】

新造された8600形

 御堂筋線輸送量増強工事の完成により、1995(平成7)年~1996(平成8)年にかけて10両編成化を実施した。増結は元あった8600形を8500形に改番・新8600形を新造し組み込む形としたが、これは元の8600形に設置していた簡易運転台をそのまま活用し、編成内の形式別編成順位を揃えるためである。最初に10両編成化された第02編成は、ダイヤ改正当日1995(平成7)年12月9日から10両編成で営業運転を行った。

改 造

警笛の変更(初代→2代目) 【改造時期不明】

 登場時は10系同じ警笛を装備していたが、後に2代目の警笛に変更された。これに関する資料がないため詳細は不明である。

座席モケットの交換・加速性能の引き上げ 【改造時期不明】

 登場当初の座席モケットは車内の木目の化粧板と合うようなオレンジ色を採用していたが、現在はゴールデンオリーブ色のモケットを使用している。また登場時の加速度は2.5km/h/sであったが、2.8km/h/sに引き上げられた。これに関する資料がないため詳細は不明である。

車内案内表示装置・ドアチャイムの自動化 【2002(平成14)年】

 2002(平成14)年に第06編成への車内案内表示装置設置・ドアチャイムの自動化が行われた。従来はドア開閉に車掌スイッチと連動して鳴る仕組みではなく、別にボタンを押して鳴らす仕組みであった。この改造は第06編成のみで終了した。

エンブレム更新・警笛の変更(2代目→3代目) 【2005(平成17)年】

 2005(平成17)年3月中旬から下旬にかけて、老朽化が進んでいた前頭部エンブレムの更新が行われた。同時期に警笛が2代目→3代目へと更新され、現在のビブラートが利いたような警笛となった。

機器更新改造 【2012(平成24)~2017(平成29)年】

機器更新改造を行った第03編成

 登場から28年が経過し、車両機器の老朽化が目立ってきたことから機器更新改造が2012(平成24)年の第03編成から始まり、他に第06・07編成も改造を行った。第03編成と第06・07編成で施工された改造内容が異なるため、第03編成は2017(平成29)年に再入場して追加改造を行った。

【主な改造内容】

前照灯のLED化 【2012(平成24)年~2018(平成30)年】

LED化された前照灯

 第03編成が機器更新改造で前照灯のLED化を行ったが、他の編成については機器更新改造を待たずに先行してLED化が行われた。なお機器更新改造でLED化を行った第03編成8903号車は、2013(平成25)年1月頃よりLEDの形状が変更されていたが、後に通常のものへ戻された。第01・05編成はLED化されないまま廃車となった。

8903号車で試験されたLED前照灯

8903号車で試験されたLED前照灯

第03編成

第03編成

リニューアル改造 【2018(平成30)~2021(令和3)年】

改造中の第07編成

 経年劣化により内装に傷みが発生してきたため、床敷物・化粧板などを更新するリニューアル改造が行われた。第06編成はリニューアル改造時に方向幕のLED化を行っている。車両構造の制約等からLCD式車内案内表示装置の設置は困難であり、第03・07編成には未だに設置されていない状態である。また側面窓の日除けとして採用されていたアルミ製鎧戸は、後にケガの危険性等の理由からカーテンに変更されている。

車内

車内

座席

座席

増設された扉部のつり革

増設された扉部のつり革

車椅子スペース

車椅子スペース

車内案内表示装置(第06編成のみ)

車内案内表示装置(第06編成のみ)

扉

床敷物

床敷物

非常通報装置は更新されず

非常通報装置は更新されず

連結面自動扉もそのまま

連結面自動扉もそのまま

可動式ホーム柵対応化・ATO/TASC化改造 【2020(令和2)~2021(令和3)年】

8600形にあるTASC地上子

 御堂筋線全駅への可動式ホーム柵設置に伴い、可動式ホーム柵に対応する改造を行うことになった。可動式ホーム柵対応機能追加や、定点停止支援装置としてATO/TASC機器の搭載が行われた。TASC車上子は8600形に設置されている。第03・07編成は方向幕のLED化を併せて行った。

方向幕・行先表示器

登場時

 登場当初は英語表記なしの方向幕であった。登場後に中百舌鳥延伸開業があったが、方向幕の変化の記録がないため詳細は不明である。

英語表記追加

英語表記追加

 英語表記追加となった時期は不明。

LED化

LED化

 第06編成は機器更新改造の際に、第03・07編成は可動式ホーム柵対応化・ATO/TASC化改造の際にLED化を行った。この際に幕時代には無かった「貸切」・「臨時」・「北大阪急行」が追加されている模様。

英語表記追加

LED化

-現行-
1 千里中央

SENRI-CHUO
千里中央

Senri-Chuo
2 桃山台

MOMOYAMADAI
桃山台

Momoyamadai
3 江坂

ESAKA
江坂

Esaka
4 新大阪

SHIN-OSAKA
新大阪

Shin-Osaka
5 中津

NAKATSU
中津

Nakatsu
6 天王寺

TENNOJI
梅田

Umeda
7 あびこ

ABIKO
天王寺

Tennoji
8 新金岡

SHINKANAOKA
あびこ

Abiko
9 なかもず

NAKAMOZU
新金岡

Shinkanaoka
10 回送

OUT OF SERVICE
なかもず

Nakamozu
11 試運転

OUT OF SERVICE
回送

Out of service
12 試運転

Out of service
13 千里中央

SENRI-CHUO
貸切

Out of service
14 あびこ

ABIKO
臨時

Out of service
15 なかもず

NAKAMOZU
北大阪急行
16
17
18
19
20

主要諸元表

形式 8000 8100 8200 8300 8400 8500 8600 8700 8800 8900
車種 Tc1 M0 TE M1 M2' TE' T M1 M2 Tc2
車体構造 アルミ アルミ アルミ アルミ アルミ アルミ アルミ アルミ アルミ アルミ
自重〔t〕 26.6 35.4 27.1 35.4 34.0 27.1 27.1 35.4 34.0 26.4
定員(座席定員)〔人〕 120(39) 130(45) 130(45) 130(45) 130(45) 130(45) 130(45) 130(45) 130(45) 120(39)
車体長〔mm〕 18,900 18,700 18,700 18,700 18,700 18,700 18,700 18,700 18,700 18,900
車体幅〔mm〕 2,890 2,890 2,890 2,890 2,890 2,890 2,890 2,890 2,890 2,890
車体高〔mm〕 3,745 3,745 3,745 3,745 3,745 3,745 3,745 3,745 3,745 3,745
制御方式 GTO素子VVVFインバータ制御(登場時)

IGBT素子VVVFインバータ制御
制御装置
INV002-BM96 <東芝GTO>

機器名不明 <東芝IGBT>
主電動機

140kw 4個/両
SEA-312(東芝)
駆動方式

●:WN駆動

  歯車比103:14
連結装置

●:緑木型密着

○:半永久
補助電源装置

●:BS1430-A
空気圧縮機

●:HS20-2
集電装置

▼:TC-20

  第三軌条上面接触式
制動装置 HRDA-1 電気指令式電磁直通空気ブレーキ

(回生ブレーキ・保安ブレーキ・応荷重装置付)
台車形式 M車:SS-106 T車:SS-006
最高速度 北急線内:70km/h OM線内:70km/h
加速度 北急線内:2.8km/h/s OM線内:2.8km/h/s
減速度 3.5km/h/s(常用最大) 4.5km/h/s(非常)
集電方式 / 電圧 第三軌条集電方式 / 直流750V
走行路線 北大阪急行電鉄南北線(千里中央~江坂)

大阪市高速電気軌道御堂筋線(江坂~中百舌鳥)
配置 桃山台車庫

車両履歴表

編成表

〔←千里中央 中百舌鳥→〕

竣工日 製造所 9両編成化

による増結用
車椅子スペース

設 置

(新8600形除く)
10両編成化

による増結用
10両編成化

による改番
転落防止幌

設 置
機器更新

改 造
リニューアル

改 造
可動式ホーム柵対応化

ATO/TASC化改造
前照灯

LED化
廃 車 備 考
車 号 竣工日 改造所 車 号 竣工日 改造所 旧車号 新車号 日 付 竣工日 改造所 竣工日 改造所 竣工日 改造所
8001-(8101)-8201-8301-8401=(8501)-8601-8701-8801-8901 1986.02.28 アルナ 8101 1987.02.02 アルナ 199-.--.-- 8601 1996.01.22 アルナ 8601 8501 1996.01.22 200-.--.-- 2016.03.09
8002-(8102)-8202-8302-8402=(8502)-8602-8702-8802-8902 1986.12.12 アルナ 8102 1987.02.02 アルナ 1994.11.28 8602 1995.12.08 アルナ 8602 8502 1995.12.08 200-.--.-- 2014.08.11
8003-8103-8203-8303-8403=(8503)-8603-8703-8803-8903 1987.08.10 アルナ 199-.--.-- 8603 1996.05.20 アルナ 8603 8503 1996.05.20 2003.12.26 2012.10.15 桃山台 2021.07.09 桃山台 2021.07.09 桃山台 塗装車
8004-8104-8204-8304-8404=(8504)-8604-8704-8804-8904 1987.09.07 アルナ 199-.--.-- 8604 1996.03.01 アルナ 8604 8504 1996.03.01 2004.07.29 2015.02.18
8005-8105-8205-8305-8405=(8505)-8605-8705-8805-8905 1989.07.02 アルナ 1995.10.26 8605 1995.12.26 アルナ 8605 8505 1995.12.26 2003.06.18 2018.01.23
8006-8106-8206-8306-8406=(8506)-8606-8706-8806-8906 1992.02.20 アルナ 199-.--.-- 8606 1996.02.07 アルナ 8606 8506 1995.02.07 200-.--.-- 2015.03.31 桃山台 2019.12.02 桃山台 2020.06.12 桃山台 ラッピング車
8007-8107-8207-8307-8407=(8507)-8607-8707-8807-8907 1993.04.30 アルナ 199-.--.-- 8607 1996.02.16 アルナ 8607 8507 1996.02.16 200-.--.-- 2014.08.04 桃山台 2018.09.07 桃山台 2020.03.27 桃山台 ラッピング車