
8000形原型/2008.03.26-新大阪
北大阪急行電鉄8000形車両は、1986(昭和51)年7月1日から営業運転を開始した車両で、開業当初からの2000形置き換え用に製造された。北の空に光を放ちながら方位の指針となっている北極星になぞられて「ポールスター(POLESTAR)」という愛称がついている。地下鉄車両として必要な仕様を十分具備しながら、車体の軽量化、保守用のモニタリングシステムの本格導入や、乗客に対する客室内設備にも細かい配慮を各所に払うなど、充実した内容を数多くもっていることが高く評価され、1987(昭和62)年にローレル賞を受賞した。また、1988(昭和63)年10月には「ポールスター号賛歌」が制作されている。
御堂筋線の輸送力増強に伴い北大阪急行保有車両も増結が求められていた。検討したところ、乗客サービス向上で2000形を冷房化のためには屋根及び側構えの大改造が必要である、2000形を冷房化した場合は主抵抗器の放熱に冷房装置の放熱がプラスされてトンネル内温度がさらに上昇する、2000形に冷房装置を搭載するには電源の問題もある等の理由により、それらの改造費用と2000形の寿命に対し、新形式を新造したことによって得られる省エネルギー化、乗客のニーズに応えるサービス向上などの利点を考え合わせると、新形式を新造した方が得策であるとの結論に至った。8000形設計にあたり「より高度の安全輸送の確立」と「より良質のサービスの提供」を二大方針とし、「(1)乗客に対しては、快適性の向上と必要な情報の充実を図る。(2)乗務員に対しては、運転操作性や作業環境の改善と異常時対応の迅速化を図る。(3)技術員に対しては、保守作業の簡易化と機能の信頼性の向上を図る。(4)企業イメージの向上。」という4つの方向からきめ細やかな検討が行われた。その結果、(1)貫通扉の自動化・正面に加え側面にも行先表示器の設置、(2)運転台のデジタルメーター・マイコン式モニタ装置の採用、(3)アルミ車体・VVVFインバータ制御の採用、(4)斬新な車体外観デザインの採用など、可能な限り最新の技術を取り入れた。
当初は8両編成(8000-8200-8300-8400-8600-8700-8800-8900)で登場したが、10両編成まで増結が可能な機器配置で設計された。第01・02編成が8両編成で竣工、第03~07編成は9両編成での竣工である。1993(平成5)年4月30日に第07編成が竣工、代わりに2000形第02編成が1993(平成5)年10月6日で廃車となって置換えが完了、同時に冷房化100%を達成した。1995(平成7)年~1996(平成8)年にかけて10両編成化を行っている。
2012(平成24)年からは機器の老朽化が目立ってきたことから機器更新改造が開始。また8000形の置き換え用として2014(平成26)年に9000形が登場し、2014(平成26)年7月の第02編成から一部編成の廃車が行われた。廃車されたうち、8001号車は桃山台車庫で保存、8901号車はカットモデルとして桃山台車庫に、8005号車は兵庫県丹波篠山市内の会社敷地内に保存されている。桃山台車庫で保存されていた8001号車については2021(令和3)年8月に解体された。
2018(平成30)年からはリニューアル改造、2020(令和2)年からは可動式ホーム柵対応化・ATO/TASC化改造が残った3編成に対して行われて現在に至る。
現在、10両編成3本の30両が北急南北線・相互直通運転をしている御堂筋線で活躍している。
車体はアルミ製で、企業イメージアップのためにアイボリーホワイトで塗装されている。これにファインレッドとマルーンの帯でアクセントを付けている。桃山台車庫内の自動研掃塗装装置の撤去に伴い塗装は行われなくなり、塗装車として残っているのは第03編成のみで、第06・07編成はラッピング車となっている。
車体側面は、御堂筋線に合わせた片側4扉で、上部にファインレッド、腰部にマルーンの帯を配している。登場当時から側面に行先表示器を設置しており、利用客の利便性向上を図っている。
車体前頭部は、正面を斜めにカットして流動感を持たせたデザインで、貫通扉を車掌室いっぱいに寄せて運転台正面窓を広くとった非対称形となっている。上部にはポールスターのロゴと行先表示器を設置しており、そのデザインは登場から長期間経過しても古さを感じさせない洗練されたデザインとなっている。腰部の両端に前照灯・尾灯が設けられ、第三軌条路線では珍しく補助排障器(スカート)が取り付けられている。
車内は、冷房装置を搭載しながらも客室空間を極限まで大きく採れるよう、冷風ダクトを両端に寄せて中央部を1段高くしてダブルルーフとした。化粧板にマホガニ木目調を採用して親会社の阪急電鉄を思わせる雰囲気となった。座席はオレンジ色、天井はクリーム色とし、暖色系でまとめられた。日除けは阪急電鉄と同じく鎧戸を採用した。通勤型車両では珍しく車内貫通扉は自動化されている。座席は後に現在のゴールデンオリーブ色となった。第06編成のみ、2002(平成14)年11月に車内案内表示装置を設置、同時にドアチャイムの自動化が行われた。
御堂筋線あびこ~なかもず間開業と御堂筋線輸送力増強工事が進展してきたことから、8両編成で竣工した第01・02編成を9両編成化した。増結は8100形を新造し、8000・8200形の間に組み込んだ。
御堂筋線輸送量増強工事の完成により、1995(平成7)年~1996(平成8)年にかけて10両編成化を実施した。増結は元あった8600形を8500形に改番・新8600形を新造し組み込む形としたが、これは元の8600形に設置していた簡易運転台をそのまま活用し、編成内の形式別編成順位を揃えるためである。最初に10両編成化された第02編成は、ダイヤ改正当日1995(平成7)年12月9日から10両編成で営業運転を行った。
登場時は10系同じ警笛を装備していたが、後に2代目の警笛に変更された。これに関する資料がないため詳細は不明である。
登場当初の座席モケットは車内の木目の化粧板と合うようなオレンジ色を採用していたが、現在はゴールデンオリーブ色のモケットを使用している。また登場時の加速度は2.5km/h/sであったが、2.8km/h/sに引き上げられた。これに関する資料がないため詳細は不明である。
2002(平成14)年に第06編成への車内案内表示装置設置・ドアチャイムの自動化が行われた。従来はドア開閉に車掌スイッチと連動して鳴る仕組みではなく、別にボタンを押して鳴らす仕組みであった。この改造は第06編成のみで終了した。
2005(平成17)年3月中旬から下旬にかけて、老朽化が進んでいた前頭部エンブレムの更新が行われた。同時期に警笛が2代目→3代目へと更新され、現在のビブラートが利いたような警笛となった。
登場から28年が経過し、車両機器の老朽化が目立ってきたことから機器更新改造が2012(平成24)年の第03編成から始まり、他に第06・07編成も改造を行った。第03編成と第06・07編成で施工された改造内容が異なるため、第03編成は2017(平成29)年に再入場して追加改造を行った。
【主な改造内容】
第03編成が機器更新改造で前照灯のLED化を行ったが、他の編成については機器更新改造を待たずに先行してLED化が行われた。なお機器更新改造でLED化を行った第03編成8903号車は、2013(平成25)年1月頃よりLEDの形状が変更されていたが、後に通常のものへ戻された。第01・05編成はLED化されないまま廃車となった。
経年劣化により内装に傷みが発生してきたため、床敷物・化粧板などを更新するリニューアル改造が行われた。第06編成はリニューアル改造時に方向幕のLED化を行っている。車両構造の制約等からLCD式車内案内表示装置の設置は困難であり、第03・07編成には未だに設置されていない状態である。また側面窓の日除けとして採用されていたアルミ製鎧戸は、後にケガの危険性等の理由からカーテンに変更されている。
御堂筋線全駅への可動式ホーム柵設置に伴い、可動式ホーム柵に対応する改造を行うことになった。可動式ホーム柵対応機能追加や、定点停止支援装置としてATO/TASC機器の搭載が行われた。TASC車上子は8600形に設置されている。第03・07編成は方向幕のLED化を併せて行った。
登場当初は英語表記なしの方向幕であった。登場後に中百舌鳥延伸開業があったが、方向幕の変化の記録がないため詳細は不明である。
英語表記追加となった時期は不明。
第06編成は機器更新改造の際に、第03・07編成は可動式ホーム柵対応化・ATO/TASC化改造の際にLED化を行った。この際に幕時代には無かった「貸切」・「臨時」・「北大阪急行」が追加されている模様。
英語表記追加 | LED化-現行- | |
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1 | 千里中央SENRI-CHUO | 千里中央Senri-Chuo |
2 | 桃山台MOMOYAMADAI | 桃山台Momoyamadai |
3 | 江坂ESAKA | 江坂Esaka |
4 | 新大阪SHIN-OSAKA | 新大阪Shin-Osaka |
5 | 中津NAKATSU | 中津Nakatsu |
6 | 天王寺TENNOJI | 梅田Umeda |
7 | あびこABIKO | 天王寺Tennoji |
8 | 新金岡SHINKANAOKA | あびこAbiko |
9 | なかもずNAKAMOZU | 新金岡Shinkanaoka |
10 | 回送OUT OF SERVICE | なかもずNakamozu |
11 | 試運転OUT OF SERVICE | 回送Out of service |
12 | 試運転Out of service | |
13 | 千里中央SENRI-CHUO | 貸切Out of service |
14 | あびこABIKO | 臨時Out of service |
15 | なかもずNAKAMOZU | 北大阪急行 |
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20 |
形式 | 8000 | 8100 | 8200 | 8300 | 8400 | 8500 | 8600 | 8700 | 8800 | 8900 | |||||||||||
車種 | Tc1 | M0 | TE | M1 | M2' | TE' | T | M1 | M2 | Tc2 | |||||||||||
車体構造 | アルミ | アルミ | アルミ | アルミ | アルミ | アルミ | アルミ | アルミ | アルミ | アルミ | |||||||||||
自重〔t〕 | 26.6 | 35.4 | 27.1 | 35.4 | 34.0 | 27.1 | 27.1 | 35.4 | 34.0 | 26.4 | |||||||||||
定員(座席定員)〔人〕 | 120(39) | 130(45) | 130(45) | 130(45) | 130(45) | 130(45) | 130(45) | 130(45) | 130(45) | 120(39) | |||||||||||
車体長〔mm〕 | 18,900 | 18,700 | 18,700 | 18,700 | 18,700 | 18,700 | 18,700 | 18,700 | 18,700 | 18,900 | |||||||||||
車体幅〔mm〕 | 2,890 | 2,890 | 2,890 | 2,890 | 2,890 | 2,890 | 2,890 | 2,890 | 2,890 | 2,890 | |||||||||||
車体高〔mm〕 | 3,745 | 3,745 | 3,745 | 3,745 | 3,745 | 3,745 | 3,745 | 3,745 | 3,745 | 3,745 | |||||||||||
制御方式 | GTO素子VVVFインバータ制御(登場時) IGBT素子VVVFインバータ制御 | ||||||||||||||||||||
制御装置 | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||||||||||
INV002-BM96 <東芝GTO> 機器名不明 <東芝IGBT> | |||||||||||||||||||||
主電動機 140kw 4個/両 | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||||||||||
SEA-312(東芝) | |||||||||||||||||||||
駆動方式 ●:WN駆動 歯車比103:14 | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||||||||||
連結装置 ●:緑木型密着 ○:半永久 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | |
補助電源装置 ●:BS1430-A | ● | ● | |||||||||||||||||||
空気圧縮機 ●:HS20-2 | ● | ● | |||||||||||||||||||
集電装置 ▼:TC-20 第三軌条上面接触式 | ▼ | ▼ | ▼ | ▼ | ▼ | ▼ | ▼ | ▼ | ▼ | ||||||||||||
制動装置 | HRDA-1 電気指令式電磁直通空気ブレーキ (回生ブレーキ・保安ブレーキ・応荷重装置付) | ||||||||||||||||||||
台車形式 | M車:SS-106 T車:SS-006 | ||||||||||||||||||||
最高速度 | 北急線内:70km/h OM線内:70km/h | ||||||||||||||||||||
加速度 | 北急線内:2.8km/h/s OM線内:2.8km/h/s | ||||||||||||||||||||
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大) 4.5km/h/s(非常) | ||||||||||||||||||||
集電方式 / 電圧 | 第三軌条集電方式 / 直流750V | ||||||||||||||||||||
走行路線 | 北大阪急行電鉄南北線(千里中央~江坂) 大阪市高速電気軌道御堂筋線(江坂~中百舌鳥) | ||||||||||||||||||||
配置 | 桃山台車庫 |
編成表 〔←千里中央 中百舌鳥→〕 | 竣工日 | 製造所 | 9両編成化 による増結用 | 車椅子スペース 設 置 (新8600形除く) | 10両編成化 による増結用 | 10両編成化 による改番 | 転落防止幌 設 置 | 機器更新 改 造 | リニューアル 改 造 | 可動式ホーム柵対応化 ATO/TASC化改造 | 前照灯 LED化 | 廃 車 | 備 考 | |||||||||
車 号 | 竣工日 | 改造所 | 車 号 | 竣工日 | 改造所 | 旧車号 | 新車号 | 日 付 | 竣工日 | 改造所 | 竣工日 | 改造所 | 竣工日 | 改造所 | ||||||||
8001-(8101)-8201-8301-8401=(8501)-8601-8701-8801-8901 | 1986.02.28 | アルナ | 8101 | 1987.02.02 | アルナ | 199-.--.-- | 8601 | 1996.01.22 | アルナ | 8601 | 8501 | 1996.01.22 | 200-.--.-- | ― | ― | ― | ― | ― | ― | 2016.03.09 | ||
8002-(8102)-8202-8302-8402=(8502)-8602-8702-8802-8902 | 1986.12.12 | アルナ | 8102 | 1987.02.02 | アルナ | 1994.11.28 | 8602 | 1995.12.08 | アルナ | 8602 | 8502 | 1995.12.08 | 200-.--.-- | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ● | 2014.08.11 | |
8003-8103-8203-8303-8403=(8503)-8603-8703-8803-8903 | 1987.08.10 | アルナ | ― | ― | ― | 199-.--.-- | 8603 | 1996.05.20 | アルナ | 8603 | 8503 | 1996.05.20 | 2003.12.26 | 2012.10.15 | 桃山台 | 2021.07.09 | 桃山台 | 2021.07.09 | 桃山台 | ● | 塗装車 | |
8004-8104-8204-8304-8404=(8504)-8604-8704-8804-8904 | 1987.09.07 | アルナ | ― | ― | ― | 199-.--.-- | 8604 | 1996.03.01 | アルナ | 8604 | 8504 | 1996.03.01 | 2004.07.29 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ● | 2015.02.18 | |
8005-8105-8205-8305-8405=(8505)-8605-8705-8805-8905 | 1989.07.02 | アルナ | ― | ― | ― | 1995.10.26 | 8605 | 1995.12.26 | アルナ | 8605 | 8505 | 1995.12.26 | 2003.06.18 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | 2018.01.23 | ||
8006-8106-8206-8306-8406=(8506)-8606-8706-8806-8906 | 1992.02.20 | アルナ | ― | ― | ― | 199-.--.-- | 8606 | 1996.02.07 | アルナ | 8606 | 8506 | 1995.02.07 | 200-.--.-- | 2015.03.31 | 桃山台 | 2019.12.02 | 桃山台 | 2020.06.12 | 桃山台 | ● | ラッピング車 | |
8007-8107-8207-8307-8407=(8507)-8607-8707-8807-8907 | 1993.04.30 | アルナ | ― | ― | ― | 199-.--.-- | 8607 | 1996.02.16 | アルナ | 8607 | 8507 | 1996.02.16 | 200-.--.-- | 2014.08.04 | 桃山台 | 2018.09.07 | 桃山台 | 2020.03.27 | 桃山台 | ● | ラッピング車 |